姫野カオルコさんの最新作。う~ん、新しいこと、をやっております。そしてエロい。これはやらなければいけなかったのか?やりたかったのか?どちらでござんしょ?変化、ということで考えればこの作品より今後が気になるところであります。
姫野さんの作品はそんなにたくさん読んでるわけではないのでありまするが、デビュー以来、彼女が持っている強烈な色、やはりこれにファンはなびいたわけではあると思う。「もてる、もてない」という最近の世の中の価値基準を説得力を持って脇において、それらをうわまわるメッセージ(feat.お笑い&関西)を発している。乱暴に言えばそんな感じではないかと思う。その王道スタイルに飽きたのでしょうか?自分、という個よりは、女、という生物的側面を前面に出してきた、って感じもするけど。もともと生物的側面は出てたのかな?男の子ぽいからオレが分からなかっただけかもね。 本作品は8篇からなる短編集。作者本人の意図は知らないけど、帯に書かれた紹介文を見る限りテーマは「恐怖と残酷」。そして背表紙側の帯には大森望氏(私はこの人知らないんですが)による、新しい技法を使っている、という解説文。読んだ限りではホラー作品だ、と言いきってしまうのはどうかな、と思った。背筋が寒くなるような怖さはないんですよね。なんだか気味が悪い、ってのもない。いや、少しあるかな? でも一般的な「なんだか気味が悪い」ってのよりは薄い。間違い無く断言出来るのは、今までと違う、ってこと。ただ、4篇目の「心霊術師」は「不幸」な女の子が本人は全くそれに気づかず日々生きているって話なので姫野カオルコ王道パターンにかなり近い。これ以外の話になると、本来、姫野カオルコが持つ突き抜けた強さ、みたいなものがあまり感じられない。あえて、消したんだとは思いますが(ただ作家としての強さはもちろんキープ)。以前に短編集『サイケ』を取り上げているが、今回の作品は「サイケ」のフォーマットでアレンジをかなり変えて出来あがったモノ、とも言える。『サイケ』で感じた姫野カオルコらしさが今作ではあまり感じられないのは、「女性の生理」、みたいな僕の分からない部分で描かれている部分が多いから、という気もする。そうなると、本当の意味での原点回帰、なのかな。新しさ、変化、ってものに対する何らかの思いは確実にあった、とは思うんだけど。 前回、前々回、で取り上げた『ぼっけえ、きょうてえ』と『GOTH』、これらは共に短編で恐怖(それらしきモノ)を描いたジャンルだ。これと比較してみるのもおもしろい。なんだろうな、ホラー&ミステリーブームを考えた時、「恐怖を描く」ってのは、ダンスビートが乗りこんできて大きな変化を遂げた音楽シーンに近いものがあるのかも、規模は小さいですけどね。「自分なりの恐怖」を描きたい作家が増えた、とか? 『ぼっけえ』は確かに「古い」んだけど、今出てくると「新しい」感じがするし、→エゴ・ラッピン?、違うなあ。エゴによって日が当った「古い」バンド→デタミネーションズ?、ちょっと違う気もするけど・・・。『GOTH』、これは「新しい」ですね、→あらかじめダンスビートが刷り込まれた世代による作品、ですね。となると、姫野さんの『よるねこ』はなんだ? あっ、思いついた!「54-71」ってバンドいますよね?あれに近いんじゃないのかな。音から漂う世界観が一緒、ってのはではなくてその立ち位置。例えておきながらなんだけど、実は「54-71」に関しては僕はインディーズ盤の試聴、あとはTVでちょっと見た、だけだ。まあ、詳しいわけではない。しかし、昨今の彼らに対する高評価、特にミュージシャンズ・リスペクトが多いように思う。ホメ言葉としては、新しいことをやっている。これ、これに近いと思う。「54-71」知らない人には申し訳ないです。「54-71」は要するに彼らが繰り出すビ-ト、が新しいんだと思う。それもそれなりに考えがあり、練られて作られたもののはずだ。同然、同業者は高い評価。しかし、決してノリがいいビ-トではないので僕のような一般音楽ファンは戸惑い、評価を保留したり賛否が分かれたりする。今回、姫野さんがやったのはこれですね、たぶん。しかし、ビート(の種類)ってのは流行りすたりはあれど消えてなくなるものはないと思う。種類は増える一方ではないかな、つまり反応するやつが増える(一般化される)。トランスとかドラムンベースって昔じゃ考えられないですよね?そうなると姫野さんは新境地ってよりは、新しいジャンルの開拓、ぐらいの意気込みもありそうな・・・・・・・。うわあ~、分かんねえ~。音楽を用いての他ジャンルの定義付けってのはやりやすいし分かった気になるんだけど。今回はかなり自己脳内解決の妄想色が強いと我ながら思う(いつもだけど)。もっとリアルな、人間、年齢、女、とかの根本的部分(+表現者気質)ってことで分析したほうがいいのかなあ、別に必要のないことだけど。しかし、本作品のように「身をゆだねる」ことが出来なかった作品に出会うと戸惑ってしまう。好きな作家の場合は特にね。そんなもんだよ。
by nironironiro
| 2002-08-23 11:29
| 姫野カオルコ
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